自動売買の悩みに役立つ書籍

必要もないのに「繰り上げ返済」や「保険の見直し」をしている人もけっこういるような気がする。
「損益計算書」に載っているのは、今年1年間の収益や費用や利益である。
そのため、「いまを見る」ことができる。
「繰り上げ返済」「保険の見直し」の裏側先のふたつのなにがおかしいのかというと、まず「繰り上げ返済」の根拠となっている「Cさんは債務超過状態だから危険」という前提がおかしい。
たしかに、会社は債務超過だと倒産する可能性が高い。
しかしそれは、会社の場合、「仕入れ先に早く代金を支払わないといけない」「借入金をすぐに返さないといけない」という事情をかかえているからである。
それに対し、個人の住宅ローンの場合は、「数十年かけて支払いを毎月数万円ずつ」なのであって、そんなに差し迫っているわけではない。
つまり、会社と個人とでは支払いの前提がまったく異なるのである。
会社にとっての負債はすぐに支払うべき負債だが、個人にとっての負債はゆっくり支払っていけばいい負債である。
個人の場合、いくら負債が多くても、すぐに支払うべきものでなければ気にする必要はまったくない。
負債については、「30年で3000万円だから、1年で100万円だな」ととらえておけばいいのである。
「家庭の決算書」で債務超過うんぬんをいい出すのは、センスがない話だといえるだろう。
さらにいうと、「マンションの価値が2500万円に下がっている」というのもまったく気にしなくていい。
いますぐにでも売りたいというのであれば話は別だが、せっかく買ったマンションなのだから、これからもずっと住みたいと思うのが普通だろう。
ずっと住むのであれば、当然しばらく売ることもないのだから、いまの売値である「2500万円」という数字はまったく無縁の数字なのである。
つまり、貸借対照表によって見ることができる未来というのは、次のようなものだと思ってもらいたい。
それではあらためて、Cさんの決算書(貸借対照表)を個人の観点から見てみよう。
どうか、マイナス500万円に気を取られずに、次のページの決算書をながめていただきたい。
たしかに、債務超過の状態が解消されれば不安からは解き放たれる。
家計の見直しに成功した気分にもなる。
しかし、その分、返済のためになにかを犠牲にしているはずである。
ここまでくると個人の価値観の問題だからなんともいえないが、「せっかく長期間貸してくれたんだから、存分に借りてやろう」と思うのも悪いことではない。
今後もそれなりの安定収入が見込める場合や、金利が低い場合などはなおさらだ。
少なくとも、Cさんの決算書を見て、「債務超過ですよ、会社だったらとっくに倒産していますよ」というのは、不要な脅しでしかないのである。
この不要な脅しの延長線上に「保険の見直し」を勧められることもある。
たしかに、家計に占める保険料の割合は低いものではない。
「保険の見直し」をすれば家庭の利益は増えることもあるだろう。
しかし、家計の見直しをしてくれる専門家の多くが、どこかの保険会社の販売代理もしているのが実状である。
専門家が保険の加入者から直接お金を取ることはないが、保険会社からは紹介料としてそれなりのお金が入ってくるのだ。
家計の見直しの際に必ずといっていいほど「保険の見直し」が出てくるのには、そういった事情があるのである。
最近では、どの保険会社も多種多様な商品を用意しているので、個人個人の将来設計に合わせた商品は必ずある。
ただ、その商品が本当にいちばんいいのか、他の保険会社の商品よりも優れているのか、というのはまた別問題である。
私がいえるのは、「保険の見直し」は信頼できる専門家に頼みましょう、ということだけである。
話をCさんの決算書に戻すが、「でも、貸借対照表で債務超過ということは、もしもいまCさんが死んだらたいへんじゃないですか。
借金が500万円残ってしまうということですよ。
そのときはどうすればいいんですか?」と反論する方もいるだろう。
しかし、「もしもいまCさんが死んだらたいへん」ということだったら、生命保険に入っていればいいのだ。
そのための生命保険である。
それでも負債のほうが大きいのであれば、遺族は相続放棄をすればいいのだ。
「もしも」「万が一」といった不確定なことに惑わされる必要はない。
そもそも、不確定なことを心配しないで済むように「保険」というものが存在しているのだから。
結局のところ、普通のサラリーマン家庭ならば、決算書は参考程度に受け止めるべきもので、切実に対応を考えるようなものではない。
同じ貸借対照表でも、数年先の未来を見せる会社のそれと数十年先の未来を見せる個人のそれとでは、そもそも同一の次元では語れないのである。
数字が持つ説得力をうまく活用する私は「繰り上げ返済」や「保険の見直し」を否定するつもりはまったくない。
必要であれば、どんどんすべきだと思う。
ただ、決算書で出された数字は人々に説得力を与えるので、悪用はしてほしくないと切に願っているのである。
「高いおやつは買ってはいけません」といわれるよりも、「おやつは300円までです」といわれたほうが強制力は増す。
「あともうちょっと頑張ってよ」といわれるよりも、「あと5日間だけ頑張ってよ」といわれたほうが頑張れる。
「交通事故で亡くなる方がたくさんいます」といわれるよりも、「交通事故で毎年1万人の方が亡くなっています」といわれたほうが、自分の身近なことに感じられて安全に気をつけようと思うようになる。
「『エイリアン2』はとてもいい映画です」といわれるよりも、「『エイリアン2』は74回観ました」といわれたほうが、その映画は本当にいい作品なんだという想いがよく伝わってくる(実際に映画評論家の平野秀朗氏がそういっていた)。
私も『女子大生会計士の事件簿』というミステリー小説の第1巻を出す際、「3000部は売れる」ということを出版社に納得してもらうために、当初は、「意外と読者は多いはずなんです!」と主張していた。
ところが、それではまったく相手にされなかった。
そこで、途中から、「会計士・税理士試験や簿記検定の受験者数から推定すると、会計人口は300万人いる。
そのうちの0・1%の人に受け入れられれば3000部は売れます!」という論法に変えてみた。
すると、出版がすぐに決まり(もちろんこれだけが原因ではないが)、現時点で20万部近く売れている。
私の予測自体はまったく外れているのだが、根拠がたいしてなくても、とにかく数字を使って話をすれば主張を受け入れてもらいやすくなる。
何事にも「数字を使って話をする」という訓練をしてみると、プレゼンテーションや会議での説得力も増すので、ぜひ応用していただきたい。
単価が高いと売り上げや利益計画がプレやすいということだ。
たとえば、単価10万円の商品があったとするならば、月に10人くらいに売れば利益を出せるだろうが、もしかしたら5人にしか売れない月もあるかもしれないし、月の売り上げがゼロという可能性もないわけではない。
そうなると、売り上げや利益計画を立てることなどまずできないし、今後の商売の展開を見通すこともできない。
「店を大きくすべきなのか小さくすべきなのか?」「これからどう商売を展開していくべきなのか?」といった戦略を立てることもできず、安定した経営がむずかしくなってしまう。
これでは、まさに行き当たりばったりの経営だ。
だから、次善の策として、単価はあまり変えずに、その分回転率を高めてお客の数を増やすという戦略になっていく。
「売り上げ=単価×数」という式は永久不滅の法則であり、単価を上げられないならば、数(回転率)を増やしていくしかないのである。
もちろん、単価が低い、つまり安ければ安いほど、お得感が出てお客を集めやすくなるので、回転率を高めるためにあえて単価を下げていくという手もある。
一時期、生井屋チェーンが値引き合戦を行ったのは記憶に新しいが、これも、まずは回転率を重視したうえでの戦略だ。
安いからお客が集まるし、お客が集まるから大量仕入れでさらに安くもできる。

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